地方でのゆとりある共稼ぎから東京への転勤。妻は再就職できず心を病み、東京での生活費も重くのしかかり…

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地方の支店に配属

 私自身ではなく、年の近い弟の話です。私たち兄弟は首都圏の出身ですが、弟は大学を卒業後、就職先で地方の支店に配属されることになりました。そこは非常に生活環境が良く、賃貸物件の家賃はじめ生活物資の値段も相当安くて、初めての一人暮らしを大いに謳歌したのだそうです。

 やがて何年か後に、弟は現地出身の女性をお嫁さんにもらい、結婚しました。そこまではよかったのですが、その少し後に弟は、東京都心にある部署に転勤することになったのです。彼はもともとがそこの配属であったので、栄転とはちょっと違っていました。もちろん、遠方からの移動なのでいくらか会社からお手当は出たのですが、引っ越し費用全部をまかないきることはできませんでした。

ずっと働いていたお嫁さんは

 もう一つ打撃だったことは、結婚してもずっと働いていたお嫁さんは、必然その仕事を辞めて東京について来ざるを得ませんでした。とても打ちこんでいた仕事だったし、かなりのポストにもついていたので、内心は相当の葛藤と動揺があったと、私は思っています。彼女は引っ越し後、東京で仕事を探しました。ですが、なかなか思うような職が見つからずに鬱々とし、また初めて地元を離れて暮らす事にも、なかなかなじめませんでした。

 私個人にはとても美しい響きに聞こえるのですが、彼女の話し方にはその地方特有のアクセントがあります。運悪く、どこかの面接先でそのことを意地悪なニュアンスで指摘され、以来激しく落ち込むようになってしまいました。

溶け込んでいくのに必死で

 近くで支えるべき彼女の夫(弟)は、新しい配属先に溶け込んでいくのに必死で、そんなお嫁さんを目の当たりにしながらも、なかなか時間を割いてケアしていくこともできませんでした。お嫁さんは、ひとり電車に乗って私の実家の両親に会いに来て、こういったことを控えめに相談してもいたようです。

 ですがある時、どうしても落ち込みが晴れず、弟はしばらく彼女を地方の実家で療養させることにしたのです。その頃から、お嫁さんは数週間単位で、地方の実家と東京の住まいを行き来するようになりました。背に腹は代えられないのですが、飛行機を使っての帰省ですから、まとまったお金が出ていきます。

彼らの誤算

 弟の家計はかなり逼迫していました。まず、彼らの誤算は家賃を見誤ったところです。地方に暮らしていた時と同じ居住スタイルを求めましたが、東京の、しかも都心に近いとなるとその値段は何倍にも膨れ上がります。

 ですが、弟たちは「夫婦共働きだから、二人の収入があればなんとかなる」として見切り発車をしてしまいました。確かに弟の収入は少し上がりましたが、東京の物価を考えると不十分な値上がりです。そして頼みの綱のお嫁さんは、なかなか職が見つからず、また少し心を病んでしまってもいる…。

『固定費支出』がどんと大きな比重

 弟は頻繁に実家に寄り、食料などを抱えて帰っていきます。質素な性格なので、恐らくはごく切り詰めた生活でしのいでいると思われます。ですが、いくら食費などを切り詰めたところで、家賃はじめの『固定費支出』がどんと大きな比重を構えていたのでは、なかなか家計は楽にはならないでしょう。最近はとうとう貯金を切り崩し始めたとも言っています。

 ただ、希望はあります。お嫁さんが心理カウンセリングを受け、かなり良くなってきているとの話で、実家へ飛ぶ回数もずいぶん減って来ました。この調子で、もう少しすればきっと、何かしら好転が起こると思うのです。

 弟とお嫁さんは真面目で、仲の良い夫婦であり、私たちにもとても真摯です。この二人が今の逆境を乗り越えられるよう、私たちは心から応援しています。

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